存在そのものがメッセージになる

愛ある思いが、言葉を紡ぎ、人と人とをつないでいく

『雪かき』に宿る無条件の愛

もう随分と長い間、書棚の片隅にひっそりと佇んでいた『ある1冊』の本が物凄く気になり、

 

思わず手に取り、ページをめくってみた。

 

その本の名は、

 

村上春樹の『ダンス・ダンス・ダンス

 

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読み進めていくうちに、

 

今の僕の生活に必要な『ワード』に出会った。

 

それは

 

『文化的雪かき』という言葉。

 

ライターをしている主人公の『僕』は、仕事の選り好みもしないし、期限前にはきっちり原稿を書き上げ、丁寧に仕事をする。

 

他の人が手を抜くところを真面目にやり、ギャラが安くても文句を言わず、黙々と仕事をこなす。

 

そして、急な依頼が来ても、必ず時間内に仕上げ、原稿を渡す。

 

おかげで、僕の評判は上がり、仕事がどんどん舞い込んでくる。

 

そんな『僕』は『仕事』を『雪かき』と同じものだと言う。

 

夜に積もった雪を、朝の通勤通学の人達が出掛ける前にそっと道端に寄せておくようなもので

 

人の目に付くものでないけれど、誰かが引き受けないと『循環』していかないもの。

 

そのことを『雪かき』に喩えている。

 

自分の仕事に『使命』も『実現したい思い』も『伝えたいもの』も『こだわり』も特にないけれど、

 

与えられた仕事をただ黙々と丁寧にやり続ける。

 

やれやれ。

 

なんと深みのある言葉だろう。

 

『雪かき』の喩えは、僕がしている『民泊清掃』の仕事を的確に表現している。

 

ゲストが退室した部屋の扉を開けて

 

ゴミ箱の中にあるゴミ袋を取り出し、

 

新しいものに取り替えたり、

 

ベッドカバーや布団のシーツを洗濯・乾燥して、また取り付けたり

 

床に落ちている髪の毛を掃除機で吸ったり、

 

ベッドの下に溜まった埃をクイックルワイパーで取り除く。

 

使われた食器を所定の位置に戻し、溜まっているゴミをゴミ捨て場に出して、元にあった姿に戻す。

 

一言でいえば、『ゼロ』に戻す仕事。

 

ゲストが入室する時には、もう僕はいないので、僕の仕事をしている姿を見られることはないけれど、

 

ゴミ箱に捨ててある食べ物の容器とか

 

隅っこに溜まっていた埃とか

 

キッチンの排水溝からしていた臭いは

 

無くなっていて綺麗になっている。

 

それらも、道端に積もっている雪を道端に寄せておくような、誰かがやらないと『循環』していかないもの。

 

村上春樹さんが『雪かき』と表現したものは

 

まさしく『清掃』の仕事の本質を突いていました。

 

そして、世の中にある仕事の本質を結構突いているんじゃないかな?

 

清掃の仕事をする前の僕は

 

好きなことを仕事にしようとしたり

 

人の役に立ちたくて仕事を探した時期もあったけれど

 

本当は、人から賞賛されかったり

 

認められたかったりする動機から来ていた。

 

自分に自信が無かったから、人から承認してもらおうとしていた。

 

清掃の仕事を黙々と続けて1年が経って

 

ゲストが使った部屋を元に戻すことを繰り返していくうちに

 

今まで、人からの評価や賞賛が欲しくて、『条件』をいっぱい付けて、仕事を取り組んできたことに気付きました。

 

『雪かき』仕事は、誰の目にも付かないし、見栄えもいいわけでないけど、僕たちが安心して生きていくためには、不可欠なもので、

 

つまり、気持ちがゼロになるからこそ、『無条件』に人に与えている尊いものであることを清掃の仕事を通じて体感しています。